僕は、たった一人のために歌う「ソングレター」
という活動を、2004年から続けています。

2007年からは、ありがたいことに
それがお仕事となったんですが、

最初は、これが仕事になるなんてことは
全然思ってなかったんです。

じゃあ、どうしてこんなこと始めたのかというと、
次のようなきっかけがありました。


2004年に、ホームページで自分の音楽を配信する
ことをし始めて、「多くの人に聴いてもらおう」
と思って、ブログをやっていたんですね。

で、そのブログに、あるブックデザイナーの方が
リンクをしてくれたんですけど、

その方が、ある日の夜中に
ネットサーフィンしていたんです。


そうしたら、ネットサーフィン中に、

「ゆなちゃん」

という中学校3年生の女の子のブログに目が
とまったんですね。


で、それはどんなブログだったかというと、
彼女はリストカットをする女の子だったんですね。

そのブログを読むと、
本当に、日々の辛い心情が滔々とつづられていて、

それを見たブックデザイナーさんは、
すごく心を痛めたそうで、


「この日記を見ている人は、
 どうかメールでもいい、
 コメントでもいいから、
 彼女に温かいメッセージを送ってほしい!」



と、号令をかけたんです。


で、その号令を見た時に僕も、

『これは何かしたい・・・』

と思ったんです。


というのも、
当時自分は会社を興していて、でも、
それがうまくいかなくて借金を抱えて、
工場でアルバイトをして生計を立てたりとか…

そんな時期だったので、

人が苦しんでいる姿というのが、
なんか他人事とは思えなかったんですね。


それで、次に思ったことは、

『じゃあ、自分には何が出来るだろう?』

ということでした。


自分は、メールを送ることもできるし、
コメントを書くことも出来る。


でも、自分はせっかく曲が作れるんだから、


『そうだ!
 彼女のために曲を
 プレゼントしたらどうだろう?』



って思ったんです。


でも、そこで

「待てよ・・・」

と思いました。


リストカットというと、
すごくナイーブな問題じゃないですか。


そのナイーブな問題に対して、
顔も知らない第三者がそこに触れることで、

「逆に彼女を傷つけてしまうんじゃないか」

って、すごく心配になって、


やるべきか。

やめるべきか。


そんな風に、心が揺れました。


でも、最後に、


「だけど、やらなかったら、
 何ひとつ彼女に伝わらない!」



って思って、

慎重に言葉を選びながら、

はじめて、一人のために曲を書いたんです。


それが、『君の痛みの理由(わけ)』という
ソングレターになったんですね。


そうして、ソングレターを作って、
ホームページにアップして、
ゆなちゃんのブログにメールを送りました。


「ゆなちゃん。これは君のための曲だよ。
 元気になってね。」


そうしたら、そのあとメールが返ってきたんです。


「曲ありがとうございます。
 すごくうれしかった。泣いちゃったけど…。
 安達さんの曲、大好きです」



それを見て、僕はすごく感動したんです。


さらに嬉しかったのは、

その日からゆなちゃんの日記が変わっていくんです。


「今、部屋の模様替えをして、
 これから高校に行くのが楽しみ♪」


とか、今までだったらちょっとなかったような、
明るい内容に変わっていったんです。


もちろん、僕の歌だけではないと思うんですけど、

彼女が、前向きに変わるきっかけの一つを
自分が担えたのかな、

と思うと、ものすごくそれが嬉しくて、


『あぁ、こんな自分の音楽でも、
 本当に心をこめて伝えようと思ったら、
 一人の人の人生に影響を与えることが
 できるんだ』



と思って、逆に僕自身が、勇気をもらったんですね。


同時にもう一つ、嬉しかったのは、

その時にゆなちゃんのブログを通して、
すごくたくさんのリストカットをしている女の子たちが、
僕のサイトに来てくれて、曲を聴いてくれたんですね。


それで、曲を聴いてくれた人たちが、

「私のために歌われているようでした」

というようなことを、次々に言ってくれたんです。


なので、実は


「ゆなちゃん一人のために作った曲」が、

「今までに作ったどんな他の曲」よりも、

一番多くの人の心に届いてしまったんです。


それが、自分にとっては、
本当に価値観が変わるくらいの出来事で、


「あぁ、今まで自分は、
 音楽って、大勢の人に聴いてもらわなけば
 成り立たないものだと思ってた。

 でも、そうじゃない。
 本当に一人のために心から音楽を作ったら、
 逆にそれが大勢の人に届くんだ。

 じゃあ、自分は
 一人のために曲を贈るアーティストになろう!」


って決意するきっかけになったんですね。


それが、こんな仕事を始めたきっかけです。


あの「私のために歌われているようでした」の
声がなかったら、今こんな活動、
絶対にしていないと思います。


大きなきっかけをくれたゆなちゃんと、
その時に出会ってくれたたくさんの人に、
心から感謝したいです。


出会いが教えてくれた音楽の形、ソングレター。

これからも、目の前の人を大切に、
ソングレターアーティストの道を進んでいきます。

感謝を込めて…。