前回から、2004年から2006年まで、計5回のライブを
開催していた時に学んだことをお話しています。

前回は、1stライブ大成功の後、万全の準備で臨んだ
2ndライブに思わぬ落とし穴があった話をしました。

大切な学びを得て、ライブは3rdライブへと進んで
いくのですが、実際のところ、その後も教えられる
ことばかりだったんですね。

今日は、そのあたりのお話をしたいと思います。

さて、第2回目のライブで、

「事前に用意したものより、その場で生まれる
ものの方が、人の心に響く」

と確認した僕は、翌年2月に第3回目のライブを
どのように実施しようか、あれこれ考えました。

そうして出た結論は、、、

【曲目も、その場で決める台本ゼロのライブ】

でした。

極端ですよね(笑)

でも、とにかく、持ち歌全部の歌詞カードを
ファイルに入れ、当日の空気を見ながら、
「これを歌いたい!」と思ったものを歌うという
構成のライブに挑戦したんです。

これが大成功。

ライブは1stライブに勝るとも劣らない盛り上がりを
見せ、ライブ後の懇親会の参加者が過去最高という
一体感のある空間を創ることが出来ました。

「やっぱり、自分のスタイルはこれなんだ!」

と、こう思えば何の問題もなかったのですが、
なぜかそのときの僕は、

「前回のライブは、準備が裏目に出たかも
知れない。でも、この完全即興ライブを
成功させた今の自分なら、万全の準備を
した上で最高のライブができるんじゃないか?」

と思ってしまったんですね。

そこから、じっくり準備して、ライブを創り込むんです。

4thライブは5ヵ月後の7月。

過去最高の3時間という長丁場ライブにすることを決め、
MC台本もしっかりと作っていきました。

会場の下見も終え、曲目も決定し、さぁ後は本番を
待つばかりという状態になり、当日を迎えました。

その日のライブは17:00開演でした。

会場セッティングのため、僕たちは1時間半くらい前に
会場に入ります。

机や椅子を並べ、音響チェックをしようとした瞬間、
会場の方から、“衝撃の事実”を伝えられたんです。

「ウチの音響、カラオケで使うような
感じのものですけど、大丈夫ですね?」

え・・・?

今、何とおっしゃいましたか???

今日はカラオケ大会ではなく、音楽のライブなので、
カラオケセットでは絶対に成立しないんですが…。

サーッと、血の気が引いていきました。

あわてて時計の針を見ました。

時間は16:00。よかった、まだ1時間はある。。。

「お願い!タクシーで渋谷の楽器屋に
行って、
ミキサー(音を調整する機会)買ってきて!」

とスタッフの人にお遣いを頼み、その場では別の
準備を優先していきました。

ひとまず胸をなでおろしていたら、本番30分前
くらいにスタッフの人が帰ってきました。

よかった。。

ホッと一安心して、さっそく機材を接続。

電源をつけ、ケーブルをつなぎ・・・。

あれ、ケーブル・・・?

ケーブルが、合わない!!!

そう。なんとミキサーは確保できたものの、
お店にあったケーブルではつなぐことが出来ない
ということが発覚したのでした。

『どうしよう・・・
これは、本気でヤバイぞ。。』

全身から嫌な汗が出ているのがわかりましたが、
ここで動転しているヒマはない。

もう一度スタッフの人に楽器屋まで行ってもらい、
最悪、スタートを遅らせるしかないと思いました。

『まずい、まずい、まずい、まずい・・・』

人間、追いつめられるといいアイディアが出ないもの。

そんな時、頭を抱えている僕に、別のスタッフが、

「安達さん。安達さんは絶対音感で一度
聞いた曲がすぐ弾けるから、
(演出として)お客様にリクエストをして
もらった曲を、即興演奏するコーナーで
始めたらどうですか?」

というアイディアを提案してくれました。

「それだ!!」

時間はもうライブ開始5分前。

すぐにリクエスト用の紙を用意して、音響設備なしの
状態のまま、ライブは幕を開けました。

『できるだけ、冷静に。冷静に。。。』

と自分に言い聞かせつつも、薄氷を踏むような心境。

何しろ、出口が見えないのにとにかくスタートだけ
してしまったわけです。

表面上は平静を保ちつつも、心は悲鳴を上げていました。

そんな状態が、お客様に伝わらないわけがありません。

その後ケーブルが無事到着したものの、動揺したまま
始めてしまったライブの空間はカタ~い空気が流れ、
台本通りのMCはことごとく裏目に出ていきました。

当然、脳裏に浮かぶのは2ndライブの時のこと。

「あの時の再来にしてはならない!」と思いつつも、
深みにはまっていく自分をどうしようも出来ません
でした。

しかも、前回と違うのは3時間の長丁場ということ。

でも、ステージに立てば、誰にも頼ることは出来ません。

『あぁ、ライブって、なんて孤独なんだ・・』

孤軍奮闘しながら、少しだけ雰囲気を取り戻した状態で
なんとか前半を終えることが出来ました。

「あぁ。今回のライブはこの感じでいってしまうのか…」

内心、ガックリと肩を落としたまま、今回は控え室が
なかったので、そのまま休憩中も会場にいたんです。

すると、そんな僕の目に映ったのは、

スタッフ全員が、
お客さんとコミュニケーションをとって
盛り上げてくれている光景でした。

・・・そうだった。

僕は一人じゃなかったんだ。

ステージ上は一人でも、ライブを一緒に作ってくれる
仲間がこんなにいたんじゃないか。

みんな、ごめん。

ライブは個人技じゃなくて、チームプレーだったんだね。

大切なことに気づかせてくれて、ありがとう。

休憩後、再びステージに立った僕を待っていたのは、
ライブのしやすい、あたたかい空気でした。

後半のライブは、MC原稿も大事にしましたが、
その場に合わせて少しずつアレンジしながらライブを
創っていきました。

描いたとおりの反応。

お客さんと、ようやくキャッチボールが出来ている
実感がわいてきました。

そうして、本編が終了し、アンコールになりました。

アンコールのかけ声も、実はスタッフの人が一番
がんばって声を出してくれていました。

『本当に、何から何まで支えて
もらっているんだな…』

感謝の気持ちをかみ締めながら、その日用意していた
新曲をアンコールに歌いました。

タイトルは、『見果てぬ夢と宝物』。

奇しくも、「仲間がいるから、夢を追うことが出来る」
という感謝の気持ちを歌ったソングレターでした。

スタッフの皆がいなければ、あのままの空気で
ライブを終えていたかもしれない。

スタッフの皆がいなければ、ライブの開催自体
成り立たなかったかも知れない。

それ以前に、スタッフの皆がいなければ、
「ライブはそのうち出来ればいいや」で終わって

いたかも知れない。

そうだ。スタッフの皆がいなければ、
こうして人前で歌を歌うことも出来なかったかも
知れないんだ——。

歌いながら、今までに感じたことのないあたたかい
気持ちに包まれました。

歌詞の内容と、歌う気持ちが寸分も違わない状態で
歌っている自分がいました。

「今の僕には 何一つ
確かなものは ないけれど
信じてくれる 人がいて
励ましあえる 友がいる
言い尽くせない 感謝とか
上手く言えない 『ありがとう』
言葉足らずの この僕の  心のうちの
そのままを  そのままを 伝えて・・・
(見果てぬ夢と宝物)」

最後のフレーズを歌い終わった後、
会場にはいつまでもあたたかい拍手の音が響いていました。

4回のライブから多くのことを学び、スタッフを信頼して

翌年に開催した5thライブでは、自他共に認める最高の

ライブ空間を創ることが出来ました。

「ライブは個人技じゃなくて、チームプレー」

これからも、支えてくれる仲間たちのことを忘れずに
ソングレターアーティストの道を進んでいきます。

感謝を込めて…。